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更新日  20/06/22

不動産の相続 (上手な相続のヒント)

相続人  相続に関するコトバ  不動産相続に必要な書類  相続税はいくら?

相続咄(1)相続税が払えない  相続咄(2)相続が出来ない  相続咄(3)公正証書遺言

相続咄(4)とりあえず  相続咄(5)内縁

相続人

相続人の組み合わせパターン(順位)です。(カッコ)の中は相続分。
 
※亡くなった人(被相続人)との関係でみます。
 ※同順位に、複数の人がいる場合は、相続分をその人数で割ります。

1.子と配偶者(各1/2)       
 ※通常は、この組み合わせになります。亡くなった人の子供と妻(または夫)。

2.子                  
 ※配偶者がいない時は、子供のみです。

3.配偶者と直系尊属(2/3と1/3) 
 ※子がいない時は、配偶者と被相続人の両親、祖父母。

4.配偶者と兄弟姉妹(3/4と1/4) 
 ※子、直系尊属がいない時は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹。

5.直系尊属              
 ※子、配偶者がいない時。

6.兄弟姉妹              
 ※子、配偶者、直系尊属がいない時。

※ 子と兄弟姉妹は代襲相続(相続開始以前に、相続人が死亡していると、その子が代わって相続する)を含みます。

※ 遺言により相続分は変更できます(この人に残したい。この人には残したくない)。

各相続人には(兄弟姉妹を除き)、遺留分があります。

※ 遺産分割協議による、相続分の変更も可能です。

※ 相続するもの(現金か、Aの土地か、Bの土地か)や、割合により、いろんな問題が…。

*ひとくちメモ*  遺留分 民法第1028条以下
被相続人が遺言によっても処分できない最低限の相続の権利。

相続分について、直系尊属のみの時は1/3、その他の場合は1/2の権利を有します。

請求(遺留分減殺請求)は、知ってから1年(相続から10年)以内に行わないと、時効により消滅。

相続に関するコトバ

 相続前(誰に、何を残しますか?)

生前贈与:特定のものを、確実に(但し、贈与税に、ご注意ください)

死因贈与:生前に、贈与証書を作っておくと、法定相続人でなくても、財産を残してあげることができます(遺言でも可、相続税に 、ご注意ください)

遺言:誰に、何を残すかを決める。書き換えることも出来る。

 相続後(遺言がない時、どういう分割をするのか)

遺産分割協議書:法定相続分でない相続(特に、不動産の相続登記)には必要。
            相続人全員で。

相続放棄、特別受益証明、相続分譲渡:財産は要らなくても、内容は違います。

調停、審判:相続人の間で、紛争があるとき。

 ※ 相続関係の、各書類作成いたします。ご相談もどうぞ(全国どこでも)。

 (会社事業承継:後継者難、相続税対策としてM&Aの手法もあります)

不動産相続に、必要な書類

1.不動産を特定するもの

登記簿謄本(登記事項証明書):不動産を管轄する法務局

固定資産評価証明書:市町村役場(都税事務所)

2.相続人を特定するもの

被相続人の戸籍(除籍)謄本:本籍地

相続人の戸籍(除籍)謄本、抄本:本籍地

相続人の住民票(戸籍の附票):住所(本籍)地

遺言書(自筆証書、公正証書):あるか、ないか?

遺産分割協議書:遺言書がない時、相続人全員で作成

(その他、相続放棄、特別受益証明書、相続分譲渡証→(書式)サンプルと解説

*ひとくちメモ*  特別受益証明書(相続分のないことの証明) 民法第903条
「私は、(相続分相当以上の贈与を受けているので)、相続する財産はありません。」と、

実印、印鑑証明書で証明。

遺産分割の便法として、用いられることが多いが、トラブルになることもある。

3.相続税の計算には、

路線価図、または倍率表:税務署,『路線価・倍率表の検索』へ

詳細計算には、土地の測量図(実測図):法務局(ない場合もある)

相続税額計算の速算表は[こちら]にあります

4.相続登記

上記1、2の特定(は登記に必須)

 (法定相続分での登記は、遺言書、遺産分割協議書は不要)

土地建物相続の登録免許税=固定資産評価額×税率(1,000分の2)

相続税はいくら?

◎ 相続税のかからない金額は、

5千万円+1千万円×相続人の数 以下であれば、相続税はかかりません。

借入金(債務)は、引けます。

○ 不動産に関する相続税の計算は、

   土地・借地権・借家権は、路線価または倍率表(固定資産評価×倍率)で計算します。

   建物は、固定資産評価で計算します。

 ※ 相続税額計算の速算表は[こちらにあります。

 ※ 計算のための、事前調査、資料収集のお手伝いいたします(全国どこでも)。

◎ 軽減措置は?

○ 配偶者軽減(法定相続分=1/2は税金0円)

○ 小規模宅地の軽減

○ 露天貸し駐車場より貸家建付地のほうが大幅に有利?

  (土地の価格に対し、借地権価格×借家権価格分が減額となり、

  建物は固定資産評価額ですので、実勢より割安となり、結果として…)

○ 農地の相続について納税猶予の特例があります。

※ 税制の特例適用には、一定の要件があります。ご注意ください。

相続咄(1)相続税が払えない

1.被相続人は、遺言で、全財産を妻と子供の一人(甲)に残しました。

※ 遺言は自筆証書でしたが、裁判所の検認を受け、弁護士の助けを受けた、遺言執行者により執行され

ました。

2.遺産は、不動産所有会社(A)社及び(B)社の株式100%、(A)社所有の建物何ヶ所かを賃借している

(C)社の株式75%、及び現金預金、上場会社株式でした。

(A)社は、(C)社に賃貸している土地建物のほか、妻と子供(甲)が居住する土地建物、(C)社の社長で

子供(乙)の居住する土地建物、及び上場会社株式を所有。収入のほとんどは、(C)社よりの賃収である。

(B)社は、実質遊休不動産を所有。そのうちのわずかを近所の会社に駐車場として賃貸。

収入月額数万円である。

(C)社は、某メーカーの代理店として、業績は順調。

※ (C)社の株式25%は、社長である、子供(乙)が所有。

3.遺産のうち、妻は現金預金、上場会社株式を相続。子供(甲)の相続は、(A)(B)(C)3社の株式。

4.妻は配偶者軽減で、相続税0円。子供(甲)にはかなりの相続税がかかることとなりました。

5.収入のほとんどが、(C)社よりの賃収。しかも、それは(A)社の収入であり、子供(甲)個人の収入では

ありえません。子供(甲)が相続税を支払うのは、(A)社の法人税を支払い、子供(甲)の源泉税を支払った

残り部分となります。ほかに収入のない子供(甲)は、相続税の延納申請をしましたが、とても払いきれる金

額ではありません。

6.子供(丙)(丁)からは、遺留分減殺請求もあっています。

※ 妻と同居している子供(甲)の二人と、それぞれが独立し裕福な暮らしをしている子供(乙)(丙)(丁)の

間には交流が全然ありません。被相続人は、将来の二人を案じて遺言したと思われます。 

7.不動産を売却しようにも、大部分は(C)社の賃借権があります。仮に売却できても、法人税、源泉税、

それに当時は、譲渡土地に対する重課税の制度がありました。

8.(C)社の株式75%を所有しているのですから、当然、株主総会を開催して実力行使をすればいいので

すが、実務にうとく、役員を誰ひとり知らず、株主総会役員会の意味もわからない者にとっては、ただの紙

切れ。

※ 余裕のある状態ではありませんでした。かなりの圧力を受けていた、と思われます。

9.結局、所有の株式すべてを売却することにし、会社に関することは買い受けた人が処理することとなりま

した。法人税とか源泉税とか、考える必要なく、譲渡の税率は26%でした。

※ 相続したものが、不動産そのものだと、(遺留分しか期待できないとわかっている他の相続人から、法

定相続分で先に登記をされたりすると)、こんなにあっさりはいかなかったかもしれません。売却された会社

には後日談がありますが、それは別項で。

相続咄(2)相続が出来ない

1.相続人は、配偶者(甲)、先妻の子(乙)と(丙)の3人です。

2.遺産は、自宅の土地建物、銀行預金、郵便貯金で、債務はありません。

3.先妻の子のうち、(乙)は結婚して他県に在住しており、相続放棄をすると言っております。(丙)は約4ヶ

月前に被相続人と大喧嘩をしており、前職場までは追跡できましたが、以後は行方不明です。

※ (丙)は、もともと放浪癖があり、金がなくなると連絡してくるような人間であり、これまでは少々のケンカ

でも、居所を知らせてきていたのに、今回は様子が違っています。

4.(乙)は、夫に実家のことを内密にしておきたいため、相続放棄のための裁判所に行く時間を、なかなか

とることが出来ずにいます。(丙)は、依然行方不明で失踪宣言をしようとしても、6年8ヶ月も待たなければ

ならない状態です。遺された財産の自由な処分が出来ないと、年をとった身には、明日の生活費にも事欠く

こととなる可能性があります。

5.それで、(乙)に対して、相続放棄と同じ効果をもつ「特別受益証明書」と、(甲)への「相続分譲渡証」

二通りの書類を郵送し、どちらか一方を実印、印鑑証明付きで返送するようお願いしました。

※ 二つの書類は、(乙)にとっては、どちらでも同じことです。しかし、(甲)にとっては、(乙)の相続分全部

が(丙)に行くのか、自分にくるのかの大変な違いがあるものです。

6.結局、(乙)は譲渡証の方を返送してきました。これにより、銀行預金の4分の3は、自由な引き出しが可

能となりました。しかし、誰も住むことのない自宅と、郵便貯金の処分は出来ないままです。

※ (甲)は、老後の面倒を実の娘に看てもらうため、引越しを考えていました。また郵便貯金は、郵便貯金

法、郵便貯金規則により、相続人全員の承諾(または、失踪宣言)がないと処分できません。

7.そこで、無駄とは思いつつ、一応(丙)の捜索願を出しておきました。捜索願なんてものは、本人が身元

不明の死体にでもなってあがらない限り、効果のないものだと思っています。あと7年近くも待つのか…。

ところが、日本の警察は余程しっかりしている、と思わずにはいられない。就職のため、50ccバイク免許の

住所変更に来た(丙)に、捜索願の効力が出ました。「すぐに実家に連絡を」。

8.(丙)に、相続分相当のすべてを支払って、一件落着しました。

※ 自宅の土地建物は、相続評価の計算により支払い、時価で売却しました。居住用3千万円控除の特例

を受け、譲渡税はかかりませんでした。

相続咄(3)公正証書遺言

1.ある習い事の家元の相続です。相続人はA、B、C、D、E、Fの6名。すべて代襲相続です。

2.被相続人が亡くなったのは、年のはじめの寒い頃。お盆が近づいた頃になっても、以前に同居し、被相

続人の面倒を看ていた、代襲相続人A、Bの父親からは何の連絡もありません。

3.県庁所在地の駅前の一等地にある、不動産は皆が知っています。何点もある、価値あるお道具。しか

し、詳細まではわかりません。お道具を買うために、常に現金を身近に置いていました。銀行なんかに預け

る人ではありませんでした。お弟子さんの数から、毎月の収入は、ほぼ計算できます。

4.ためしに、不動産の価値がどれくらいのものか、詳しい人に調べてもらいました。

5.なんと、すでにA、Bの名義で公正証書遺言により、相続登記がされていました。公正証書によると、被

相続人の全財産をA、Bに相続さすとあります。

6.たしか、あの当時、被相続人は心神喪失状態にあったはず。急いで、腕利きの弁護士をお願いしまし

た。時すでに遅し。時間がかかる。それより金がかかる。

※ 通常、相続に争いあると、相続で明らかになっている、現金銀行預金等を軍資金として長期戦をするの

ですが、今回はゼロ。C、D、E、Fに軍資金はありませんでした。公正証書は公証人という法律のプロが作

成したもの、覆すには余程のしっかりした証拠が必要です。

7.遺産でわかっているのは、不動産ともっとあった筈なのにこれだけしかなかったお道具。現金その他はなし。

不動産は評価から譲渡税相当分を差し引き、お道具は道具屋の評価で、それぞれ遺留分での分配。

8.被相続人の身近にいて、遺言書を持つ相続人は強いものです。4名にとってはシブシブの和解でした。

相続咄(4)とりあえず私の名義に

1.母親が亡くなり、姉弟3人の相続です。

2.母親の財産は、実家から贈与してもらった土地。その土地はかなり広く、筆数もかなりのもの。但し、母親の

他の姉妹二人と共有。そのうえ、一括して関連会社に貸し付けしているので、単独処分は無理な話。

3.相続人である末弟には、妻の連れ子がいる。末弟が亡くなれば血のつながりのない者に土地がいく。ご先祖に

申し訳ないことになる。そこで長女が「とりあえず私の名義にして、将来処分を考えましょう…。」

4.言うように相続登記をするとすれば、遺産分割協議書か特別受益証明書かどちらかに実印、印鑑証明を添付し

て登記申請をします。これで長女の財産に確定。

5.将来、それぞれの名義に変更するのに、贈与でしますか?譲渡でしますか?税金は?

長女が亡くなっていれば、その相続人が「そんなの知りません」。亡くなってなくても…。

相続咄(5)内縁

1.内縁の夫には、前妻の子が二人います。幼い頃から、我が子同様に面倒を看てきました。

2.夫は、内縁の妻の資金援助で市会議員を2期つとめることとなりました。市会議員になったおかげで、低迷して

いた商売もやっと順調にいけるようになりました。

3.幼かった二人の子がやっと成人した頃に、夫はポックリ逝きました。内縁の妻には相続権がありません

4.子供たちの生活費、選挙資金、夫の商売を考えて夫名義にした預金、会社への貸付金等々。色んな出費があ

りました。一々、こと細かに記帳している訳がありません

5.選挙の資金なんか、領収証のない支出が大半です。会社への貸付は、夫からの貸付になっていました。預金の

一部は銀行員の証言で、なんとか自分のものと証明できましたが、ほとんどが証明できません。

6.血のつながりのない子は、一時期一緒に生活したというだけ。他人です。

7.何年かの争いの結果、取り戻せたのは一部でした。こんなになるのだったら、書類をかっちりしておくのだったの

に…。遺言もさせておけばよかった…。悔やんでもあとの祭り。

8. 亡くなった人が労働災害等の場合、内縁でも遺族給付が受けられます。が、この例のように出費をしたものにつ

いては、証明するものを残しておくことが大事なようです。

 

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